第3回 男性更年期障害について

今回は、男性更年期障害という新しい病気のことについてお話したいと思います。

更年期障害って女性の病気ではないですか?とよく聞かれます。確かに女性の更年期障害は良く知られた病気で閉経による女性ホルモンの分泌低下により引き起こされるイライラ、抑うつ、全身倦怠感をはじめとするさまざまな症状を呈する状態です。男性には閉経というものがないので更年期障害はないと長い間考えられてきました。ところが近年、男性も精巣から出る男性ホルモンが加齢により少しずつ減少しそのことで様々な症状が現れることがわかってきました。男性の場合は、その下がり方が緩やかなので症状が出ない方が多いだけなのです。症状は人により様々ですが、

精神症状として 抑うつ、いらいら、不安、意欲低下、睡眠障害などの症状
身体症状として 突然の発汗、のぼせ、肩の張り、持続力低下、自律神経失調などの症状
性機能障害として 性欲の低下、勃起障害、持続力低下

が起こります。

この病気の難しいところは、症状が“うつ”と非常に似ていることです。現実には男性更年期障害外来を受診される患者様の7割から8割の方が“うつ”であり男性更年期障害ではないと診断されているという結果が出ています。

男性ホルモンは日内変動をしており午前8-10時ごろに一番分泌が高まります。そのため診断には朝一番の男性ホルモン(テストステロン)の量を測る必要があり、男性更年期障害の国際学会は317ng/ml以下を男性更年期障害の疑いありとしています。また、男性更年期障害であるかまたその重症度を判定する問診表も存在しますが、私どもではこれをあまり重用しません。もともと欧米人向けに作られたものであり、この問診表を用いると日本人の中年以降の方はほとんど男性更年期障害の範疇に入ってしまうからです。(かくいう私も立派な男性更年期と診断されてしまいます。)現在、泌尿器科の専門委員会で日本でのガイドラインが作成中ですので近い将来その問診表を用いて診断を行うことになるでしょう。

当クリニックでは、男性ホルモンの分泌量、SDS問診表における精神症状の重症度の評価、IIEF5問診表による男性機能の評価をチェックし治療方針を患者様と相談の後、決定しております。

治療方法は、カウンセリング、漢方薬による治療、男性ホルモンの補充療法、勃起不全に対する治療などアプローチの方法も様々です。検査結果にもよりますが、即効性のある男性ホルモン補充療法をしたい、漢方薬を試してみたい、勃起障害だけ直したい、患者様の希望やゴールは様々です。画一的な治療よりオーダーメイド的な治療が良いのではないかと我々は考えております。