第7回 下腹部不快感

おしっこをした後、または 1 日中ずっと下腹が不快に感じることはないでしょうか?この不快感は人には説明しにくいタイプの症状です。原因は様々で、大腸や膀胱の炎症、骨盤骨や筋肉の炎症、女性なら子宮、卵巣を含めた生殖器の異常、男性なら前立腺の炎症が考えられます。原因が様々でいろいろな症状を呈する不快感が多いのでここで、泌尿器科の病気以外のものを除外するためにすでに婦人科、胃腸科で異常なしと診断された方を想定して原因を考えてみましょう。

女性では排尿後の不快感というものが多いようです。たとえば、頻尿があるため膀胱に尿が溜まらず、排尿してもすっきりしないと訴える方や、尿検査ではわずかに汚れがあるものの細菌感染とまではいえない慢性膀胱炎の状態の方もおられます。我々は、治療として頻尿のある方はまず頻尿を止め、しっかり膀胱内に尿を溜めることができるようにすること、そして残尿もなく不快感だけが続く慢性膀胱炎の方は漢方薬によって炎症を抑えること、ひいては炎症が起こりにくくする体質転換のような治療がもっとも良いのではないかと考えています。

男性の方では前立腺に炎症を起こす前立腺炎がこの症状のトップバッターです。 30 歳から 40 歳くらいの仕事が忙しくストレスの多い方に良く起こる病気です。仕事が忙しくなり、休養が十分に取れないときや宴会続きで疲れがたまったときこの症状は出てきます。下腹部の不快感といった漠然としたものから、鼠形部 ( 大腿の付け根 ) の痛み、睾丸痛、下腹部痛など多彩な症状を引き起こします。教科書では細菌性慢性前立腺炎、非細菌性慢性前立腺炎と検査で細菌感染があるかないかで分けていますが、簡単にいうと疲れやストレスなどで免疫機能が低下すると尿道にいる常在菌(普段から尿道に存在するがおとなしく炎症の原因にはならない菌)が暴れだし前立腺に移行して炎症を引き起こすようです。この時前立腺をマッサージした後で得られる尿に細菌を証明できれば細菌性、できなければ非細菌性と区別しているだけで基本的には同じものではないかと我々は考えています。

治療は、まず抗生剤を服用していただきます。不快感が強く仕事に集中できない場合には消炎鎮痛薬も併用します。さらに炎症を抑える効果のある生薬や漢方薬を服用していただき前立腺内の環境を整えていきます。しかし、治療の基本は患者様の生活習慣の改善です。深酒、夜更かしや不規則な生活は治療を遷延化させてしまいますので注意が必要です。