第8回 腰痛

腰痛というと症状としては最も一般的なもののひとつで、幅広い疾患でこの症状が出てきます。腰の痛みを訴えられて泌尿器科に来院される方はたくさんおられますが、泌尿器科で腰痛というと腎臓の痛みで、様々な病気で腰痛が出現します。

一番多い原因は尿路結石と呼ばれる、尿管結石、腎結石で、腎臓でできた石が腎臓にあれば腎結石、腎臓から動いて尿管に落ちれば尿管結石という呼び名に変わります。呼び名が変わるだけでなく症状は劇的に違います。腎結石の場合強い症状が出ることはまれで、なんとなくだるい腰痛や、やや濃い色の尿 ( 実は尿中に白血球や赤血球が混じっています。 ) が出たりするだけです。それに対して尿管結石は腎臓と膀胱をつなぐ細い、やわらかい尿管に硬い石が落ち込むわけですから強烈な痛みが発生します。七転八倒の痛み、吐き気を伴う痛みが襲ってきます。救急車で運ばれることも少なくありません。痛みの原因は 3 つです。

1)結石が尿管に詰まることにより尿が腎臓の中に溜り腎臓がはれる痛み、 ( これがもっとも強烈で吐き気を伴う痛みとして認識されます。 ) 

2 )結石が尿管を刺激して尿管の痙攣を誘発する痛み。

3)結石自身が尿管を傷つけながら移動する(落ちていく)痛み。

これらの痛みは、結石が動くたびに場所と痛みの程度を変えながら徐々に下腹部へと移動していきます。また、痛みとともにコーヒー色、または赤黒い肉眼でわかる血尿も出ます。最後に膀胱炎のときのような症状、頻尿や排尿時痛、残尿感などがでてくるともう結石は膀胱の近くまで来ています。あるとき突然これらの症状が消えると膀胱内に結石が落ちた証拠です。次の排尿のときに結石は尿と一緒に出てきます。尿道のほうが結石よりはるかに広いので痛むことはまずありませんが、まれに結石が大きくて尿道にはまり込んでしまう場合があります。(尿道結石)

次に多いのは腎盂腎炎です。膀胱炎を放置した場合や膀胱尿管逆流症(近日中にコラムで詳説します)がある場合、高熱を伴って左右どちらかの腰痛が起きます。午前中は平熱でも夕方に 39-40 度くらいの発熱を起こしことが特徴です。

その他、膀胱癌、尿管癌、腎盂癌、腎癌、前立腺癌などの悪性腫瘍も腎臓からの尿の流れを停滞させ腎臓の腫れのため、癌そのものの痛みのため腰痛を引き起こすことがあります。

腰痛を訴えられて私どものクリニックに来られた場合、まず検尿、超音波検査を行います。尿中に赤血球、白血球が出ていないか(血尿、膿尿がないか)、悪性を疑う細胞が出ていないか注意深く検尿を行います。次に超音波検査で腎臓内に結石がないか腫瘍の影がないか尿の停滞を示す水腎症がないか調べます。ここで異常があった場合、排泄性腎盂造影検査(造影剤を点滴し造影剤が尿となって出てくるところをレントゲンで撮って尿路に異常がないか調べる検査)を行います。

治療は、結石の場合、まずは座薬や経口薬で痛みのコントロールを行います。結石そのものに対しては、そのサイズ、場所によって治療方法は変わりますが、一般的には 8mm 以下の結石であればしばらく排石促進剤をのみながら自然排石を期待して経過観察を行います。 8mm 以上の結石の場合、または自然排石してくれない結石の場合、体外衝撃波砕石術という手術が第一選択になると考えられます。その他、結石の場所、大きさに応じて内視鏡手術や開腹手術などが適応になります。

腎盂腎炎の場合、抗生剤の投与と安静が基本的な治療方針となります。水分をしっかり取ってもらい尿量を増やすことは言うまでもありません。

泌尿器癌の場合、その癌に応じた治療が優先されます。手術、抗癌剤、放射線療法、免疫療法など最近の医療手段の進歩は目を見張るものがあります。

当クリニックでは、腰痛の原因の検索、治療、適切な病院紹介を迅速に行っています。