第23回 エイズについて

皆様、あけましておめでとうございます。年も明けて10日以上も経ちますのでご挨拶としては少し遅いのかもしれません。いつもコラムを読んでいただいてありがとうございます。今年も、泌尿器科に関するトピックな話題を提供していこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

さて、年末に性感染症に関するミーティングに参加してきました。そこは、性感染症に携わる婦人科や泌尿器科の先生方が定期的に勉強する集まりなのですが、少し気になる話題がのぼっていました。日本では、エイズが増え続けていることです。

皆さんは“エイズ”はご存知だろうと思います。日本ではまだまだ少なくて自分がかかることなど無いと思っている方も多いでしょう。また、エイズにかかると癌にかかるより怖く、命を落としてしまうと思っている方も多いかもしれません。エイズはHIVというウィルスが人から人に感染して(主に性交渉で移りますが、昨今血液製剤から感染した方が問題となっています)発症する病気です。簡単に言うとまず、HIVウィルスが人のリンパ球に感染します。HIVの初感染時は、感冒様症状が出現するだけです。それが治まると数年の時を経て、リンパ球内で徐々にウィルスが増殖しリンパ球はその機能を失い免疫不全という状態が起ります。ここに至ってはじめてエイズという病名がつきます。特別な症状ではなく、なんとなく疲れやすかったり、微熱が出たり、皮膚炎を起こしたりといった症状で病院を訪れることが多いようです。その後進行すると中枢神経が侵され神経症状や痴呆などの症状が出たり、肺炎を起こしたり、癌ができやすくなったりなどします。

欧米などでは1990年代に増加していましたが、2000年以降病気に対する理解が進み、徐々に発生率も少なくなってきています。私も日本でもそのような傾向が出ていると考えていたのですが、そのミーティングの講演者は、中国、インド、インドネシアと同様日本でも増加の一途であるといわれていました。ところが、増加の傾向を見てみると行政と教育、医師会などがタッグを組んで若年者の性教育や病気の知識の啓蒙を積極的に行っている地域では発生率が少ないとの結果が出ていました。性に対する正しい教育を若年者に行い、知らない間にHIVに感染し、知らない間に他人に移してしまうという状態が回避できれば、日本でも徐々に収束していくのではないかと思っています。

また、治療に関しても著しい進歩がありエイズを発症するとなすすべがなかった昔に較べ、現在は次々と新薬が開発され、HIVの感染がわかってからでも何十年も普通の暮らしができるようになってきたそうです。適切は治療を受ければもはやエイズは不治の病ではないと演者は言われていました。

ミーティングでの結論は、モラルのある行動は絶対必要なことであるが、感染のリスクのある方は、悩まずにHIVの感染の有無を知る検査(血液検査)を受けてもらおう、ということでした。そのために我々は、院内に啓蒙のポスターを貼ったり、患者さんからの質問に対してしっかりとした知識を持ってお答えしていこうとしています。