第24回 神経因性膀胱について

さて、年末に性感染症に関するミーティングに参加してきました。そこは、性感染症に携わる婦人科や神経因性膀胱という名前は、とっつきにくい難しい名前だと思います。しかし病態は、読んで字のごとく神経が原因で膀胱の機能が悪くなった状態で、その結果起こった膀胱の状態には色々なものがあります。

脳梗塞、脳出血など脳の障害や事故などで脊髄に障害を受けた方、また直腸や子宮の手術など骨盤の手術を受けられた後の方がこの病気になられます。また、糖尿病や膠原病など内科的疾患が原因のこともあり、原因不明のことも多々あります。

病気には、相反する2つの状態があります。大きく分けると、膀胱壁が硬くなるため広がらなくなり、尿がたまらず頻尿になるパターン、また逆に膀胱がうまく収縮できなくなってどんどん広がり残尿(排尿しても残る尿)が増えて頻尿や腹部膨満を訴えるパターンです。いずれの場合もひどくなると、尿が漏れたり腎臓が腫れて腎機能が悪くなるというような事態となります。

診断は、比較的容易で超音波検査にて残尿の量を調べたり、造影剤を膀胱内に注入して膀胱の形を見たり(松ぼっくりの様な特長的な形をしています。) 造影剤を血管内に注射し腎臓から造影剤が排泄され膀胱まで流れてくる様をレントゲンで撮る(排泄性腎盂造影検査)をすれば大体わかります。膀胱内を見る膀胱鏡をすればなおよくわかります。

その人の神経因性膀胱の程度を診るには、膀胱内圧測定という検査をします。膀胱内にカテーテルを置き、そのカテーテルから水あるいは二酸化炭素のガスを注入して膀胱を膨らませていく過程で、膀胱内の圧力の変化を見る検査です。膀胱内圧を測定することで収縮力はどのくらいか、どのくらいの膀胱容量があるのか、自分の意思と関係なく膀胱が収縮しないのか、膀胱は硬くないのかなど得られる情報はたくさんあります。

このように診断がついた方は治療を受けます。膀胱の収縮力を強くする薬や出口を広げやすくする薬で対処する方法、間歇的自己導尿といって時間を決めてご自分で細いカテーテルを入れて導尿してもらう方法、またバルーンカテーテルという留置型のカテーテルをずっと留置し定期的に交換する方法など患者さんの病気の状態、家庭環境などにより様々な方法がとられます。

我々は、つい自分たちの考えを患者さんに押し付けてしまいがちですが、患者さんの家庭事情や能力は様々です。その方にとって一番良いと考えられる方法を一緒に探していかねばならないと考えています。