風邪とインフルエンザ(流感)

約3ヶ月ぶりの更新です。多忙にかまけてずいぶんサボっていました。
暑い8月にジェネリックの話を書いた後、あっという間に秋になり、朝夕がずいぶん冷え込むようになりました。この冷え込みで、皆さんの中にも風邪を引かれた方がいらっしゃるのではないでしょうか?
私も必ず、この季節の変わり目、秋と春の年2回必ず風邪を引きます。
決まったように引くので家族は季節の変わり目がよくわかると笑います。

さて風邪はどうして引くのでしょうか?風邪は、医学的にはかぜ症候群といい、鼻水や咽頭痛、咳など上気道の症状が代表的ですが、下痢、腹痛、嘔吐など消化管の症状を呈することもあり、腹かぜとも言われることもあります。要は、どんな病原体が感染するかで症状が異なるということです。
実は、風邪の原因と考えられるウィルスはなんと200種類以上もあるといわれています。
一般的な風邪といわれる症状の原因で多いのは、ライノウィルスというもので上気道に感染し、咳、鼻水、咽頭痛などの症状を引き起こしますが、同じウィルスであるエンテロウィルスやノロウィルスは消化管に感染し腹痛、下痢、嘔吐を引き起こします。 昨年、猛威を振るったノロウィルスは記憶に新しいことでしょう。これらウィルスが感染した場合、薬局で風邪薬を買う、診療所に行って風邪薬を処方されると思いますが、風邪薬で風邪が治ると誤解されている方が多いようです。
特殊な風邪を除いて風邪薬で風邪が治ることはありません。
治すのは患者さん自身の免疫力であって、風邪薬は、症状の緩和をするだけです。

鼻水が出て困る方は、鼻水を止める、のどが痛い方は痛みを和らげる、お腹が痛い方は痛みを和らげるという薬です。後は、体が感染したウィルスを認識して免疫と呼ばれる体を守る仕組みを使ってウィルスをやっつけてくれるのを待つだけです。

私は、風邪薬を希望される患者さん(私どもは、泌尿器科ですので風邪で来られる方は、めったにおられませんが)には、“風邪は自分で治すしか方法はありません。うがいをして2次感染を防ぎ、しっかり水分を取って、とにかく寝ていてください。症状が辛ければ症状を緩和する薬を出しますが、特殊な風邪でない限り抗生剤は効きませんので出しません。”と必ず説明しています。
抗生剤を処方するかどうかは、異論があると思います。ウィルスでただれた上気道や消化管に細菌の2次感染が起こるので予防的に投与するというお医者さんもおられると思いますが、最近では、抗生剤投与により症状が緩和されたり、治癒までの期間が短くなったということは無い、というデータが報告されており、私はこれを信じています。

これに対し、インフルエンザは風邪とは別物です。 インフルエンザウィルスの感染によって引き起こされ、A型とB型があります。ご存知のように、症状は強烈で、鼻水、咳、咽頭痛は勿論、発熱、全身倦怠感が強く、場合により死亡することもあります。1918-1919年に発生したスペイン風邪もA型インフルエンザが原因で、世界中で数千万人の方が亡くなられたとされています。
予防方法は、マスク、手洗い、うがいとされていますが、現在のように発達した社会の中で、人との接触を避けるのは物理的に無理で、私自身は予防接種しか方法はないと考えています。
治療方法は、早く感染がわかればタミフルやリレンザの投与で軽いうちに回復することができると思われますが、タイムリミットは症状が出て48時間以内です。現在は、30分以内に感染の有無を知ることができる検査キットがありますので、症状が出れば我慢せず、早く医療機関にかかることが重要だと思います。

しかしながら、かかってからの治療よりかかる前の予防接種のほうがよほど意味があると私は考えています。予防接種は、健康保険が使えませんが、健康保険を使って予防接種を行った方が、あとで治療するよりよほど安価で済み、患者さんの命を救うという医学的観点からも、仕事や学校を休む必要がなくなるという社会経済上の観点からもメリットが多いと思いますが、高齢者や一部の体の弱い方に対する補助はあるとはいえ、保険を使えるようになぜ厚生労働省は動かないのでしょうか?