第36回 ジェネリック薬品

5月の連休も過ぎ、日増しに暑くなってきました。時折、大雨が降って涼しくなりますが、体調を崩しておられる方はいらっしゃらないでしょうか?

私事ですが、5月の連休は、日本泌尿器科総会というわれわれ泌尿器科医にとって最も大きな学会が岩手県盛岡市で行われて、その後十和田湖、八幡平と旅行しましたが、今年は気候も不順でみぞれ混じりの雨が降り東北とはこんなに寒いものかと驚かされましたが、地元の方にお聞きしても今年は異常気象だそうです。

4月になってからジェネリック薬品について患者さんから聞かれることが多くなりました。
“先生、薬局でジェネリック薬品を勧められましたがどうしましょう?”とか“効き目は一緒で値段が安くなると言われました。”など相談されることが多いです。以前コラム27号でジェネリック薬品について書いたことがありますが、ジェネリック薬品は先発品と同じではありません
主要な有効成分が一緒というだけのことです。体の中で吸収されるスピードも血液の中での濃度の動きも薬によって変わってきますから、先発品とまったく同じと言うわけではありません。
人によっては、ジェネリックの方が良いと感じる人もいるでしょうし、逆に先発品のほうが良かったと感じる方もおられるでしょう。私は、泌尿器科のお薬に関しては、自覚症状(自分で感じる症状)が大事だと考えています。

ですから、ジェネリックを服用することに関しては、“一度試してもらってもかまいませんよ。
服用されて、おしっこの出方が悪く感じたら元に戻してくださいね。同じかよくなるようならジェネリックのままにしてもらってもかまいません。“と説明させてもらっていますが、内科的なお薬に関しては少し問題で、例えば血圧の薬に関しても血圧の下がりが悪かったり、あるいは今まで安定していた血圧が急に下がりすぎたりするので、こちらがかなり気を使って観察する必要があります。
薬局によっては、ジェネリックに変えたことを連絡してこないこともあるので患者さんがジェネリックを服用していることに気がつかないことすらあります

なぜ4月から薬局がやけに患者さんにジェネリックを勧めるようになったか皆さんご存知ですか?

我々医療機関や薬局は、診療報酬という国によって決められたお金を一部を患者さんから残りを健康保険組合から診療代として頂いています。2年に一回この診療報酬が改定されるのですが、数年前から国や健康保険組合が負担する診療費が増えてきて財政が厳しくなりました。
そこで安いジェネリックを普及させて医療費の削減を目指したのですが、なかなかジェネリックが普及しません。そこでジェネリックを出す決定権を医師から取り上げて薬局側へ移したのです。
更にジェネリックをたくさん出した薬局には多目のお金(診療報酬)をあげますよとアメを目の前にぶら下げたので薬局は我も我もと患者さんにジェネリックを勧めだしたのです。でも彼らは、ジェネリックを勧める際、フェアな情報を患者さんに提供しているでしょうか?
もし、もらえる診療報酬が同じならジェネリックを勧めるでしょうか?我々医師は、誰もジェネリックが先発品と同じ薬だとは思っていません。別物の薬だと思って使っていますが、彼らはわかっているのでしょうか?ジェネリックは有効成分は同じですが、効果は強くなったり弱くなったりすることがあるということをちゃんと説明しているのでしょうか?
“効果は同じで値段は半分、勇気を出してジェネリックをお願いしますと言いましょう。”なんてどこかのコマーシャルのように説明していないか私は心配です。