第37回 四方山話

暑い、暑いです。連日35度を超え、通院される患者さんも大変だと思います。テレビや新聞でも連日熱中症に関する話題で持ちきりですが、最近熱中症って本当に怖いと実感する経験がありました。一部の患者さんにはお話しましたが、自分自身が熱中症になるなんて思いもしませんでした。

暑い昼過ぎ、往診を終えクリニックに帰ってくるとなんだかふわふわした感覚に襲われて、妙に眠たいような、座り込んで動きたくなくなるような感じでした。おかしいなと思いながら、のどの渇きは感じなかったのですが、冷蔵庫に冷やしておいたお茶を飲んだところ、300mlのマグカップに何杯飲んでもどんどん飲めるのです。しかも飲むたびに徐々に先ほどからの変な感覚が無くなっていきました。そうか、これが軽症の熱中症なんだ、と恥ずかしながら気が付く始末でした。患者さんには、水分をしっかり取りなさいと、えらそうにくどくど言うくせに自分は頑丈だからとか若いからとか過信していたようです。

しかも、熱中症の怖いところは、体は脱水になっているのに、のどの渇きをあまり感じなかったことでした。もし、これがまだ往診中だったらと思うと少し怖くなりましたが、私でこれなのですから高齢の方は、もっと気をつける必要があると思います。気温が高い時は外出を控えるのは勿論ですが、のどの渇き云々ではなく時間ごとに水分を摂取することをしっかりと心掛けた方が良いと思います。

とはいえ、最近のテレビ報道には玉石混交のような気がします。特に最近怪しいなあと思っているのは、お茶や水だけ摂取すると体の塩分が薄まるので塩を混ぜたり、砂糖を加えなさいという話です。これは本当に必要なのでしょうか?

確かなデータがないので自信を持って言えませんが、人間三度の食事をちゃんと取っていれば十分な塩分を摂取できているはずで、それでなくとも日本人の塩分摂取は多いと言われています。炎天下で仕事をしている方やスポーツマンで汗を多量にかく方は、確かに塩飴など水分と一緒に塩分の補給も必要ですが、普通に生活している方は、お茶や水で十分なのではないでしょうか?兎角、最近のテレビというものは正しいデータもないのになんとなく人が納得しそうなことはそれらしく報道する傾向があります。“あるある大辞典”などのテレビ番組もありましたが、テレビ、新聞などは影響力が強いのですから、情報を垂れ流すだけでなく、確かな検証と情報に基づく報道をして欲しいと思います。 そして、我々は、与えられる情報を鵜呑みにするのではなく、常に疑いの目を持って自分で確かめるくらいのつもりがないとだめなのかもしれません。