第42回 様々な頻尿

この原稿を書いている9/21現在、台風15号が、潮岬沖を通過しているようで、しばらく台風の被害らしい被害がなかった堺でも窓に打ち付ける雨風は強く、四国や名古屋の大雨が降っている地方はいかばかりかと心配になります。思えば今年は、自然災害の多い年で、新燃岳の噴火に始まり、東日本大震災、台風12号、台風15号と自然の力の強さに人間の無力さを痛感します。
 さて今回は、色々な頻尿を取り上げます。泌尿器科の病気で、頻尿といえば前立腺肥大症や過活動膀胱といった病気が、代表ですが、実は、そのような病気以外に頻尿を症状とする病気がたくさんあります。今回は、意外な病気が頻尿になることがあるので紹介したいと思います。
 教科書には、正常な排尿回数について1日7回まで、夜間はトイレに行かない、と書かれています。では、これを満たさない方々は全員異常で治療を要するのでしょうか?水分をたくさん取られる方は、当然尿量も増えますから回数が多くなるでしょうし、ビールをたくさん飲んだ日はトイレに1回くらい行かねばならない夜もあるでしょう。要は、当たり前のことですが、自分の排尿状態が、生活する上で困るかどうかが、治療を要するかどうかのポイントになってきます。夜間の排尿回数が同じ2回の方でも排尿後すぐ眠れる方は治療を必要としないかもしれませんが、すぐ眠れず1時間くらい悶々とする方は、回数自体を少なくするか、あるいはすぐ眠れるような治療が必要となるかもしれません。
 最近、高血圧の治療薬で従来の高血圧薬に利尿剤を入れた合剤を用いることが多くなってきました。そのような薬を内服されている方が頻尿を訴えて来られることも出てきました。この場合は、降圧薬の変更しか手がないので内科の先生にお願いして薬を換えてもらうことで頻尿は良くなります。また、ご自分では糖尿病であることに気がついていない方が、やはり排尿回数の多さを気にされ受診されることもあります。この場合の排尿回数の多い原因は、尿の中に糖が混じることにより尿量が増え、そのため喉が渇き、故に水分を取る、尿が作られるという医学的には多飲多尿といわれる症状が原因で、泌尿器科的な治療は必要でなく血糖のコントロールをすることで尿量も排尿回数も収まります。
 また、加齢や内科的な原因で腎臓が弱ることがあります。通常は、腎臓は夜、尿を濃縮し、量を減らして人が良く寝れる様にしますが、このような弱った腎臓は、夜に尿を作るようになります。その為、夜間の尿量が増えて排尿回数も増えるということが起きてしまいます。このような場合、前立腺肥大症や過活動膀胱の夜間頻尿のように薬への反応が良くないので実際には治療に困る場合が多いのですが、逆にここは泌尿器科医の腕の見せ所で、手を換え品を換えて何とか夜間の多尿を改善していきます。
 子宮癌や直腸癌の手術をするとどうしても膀胱のそばを切開したり切除したりする必要があるため、膀胱へ伸びる神経を傷つけてしまうことがあります。このような場合、手術の後、なかなかおしっこが出なかったり、出ても膀胱の中にたくさんおしっこが残ってしまい、そのため有効な膀胱の容量が小さくなり、頻尿になることが有ります。このような頻尿は、残るおしっこを少なくしてあげることが必要で、投薬や自分で残ったおしっこをカテーテルという管を使って出す自己導尿という方法を用いると頻尿は改善します。
 また、排尿困難を放置していると、膀胱の中に結石が出来て中をごろごろ動くことがあります。このような刺激も頻尿の原因になります。
 まだまだ、色々な病気で頻尿になりますが、要はおかしいなと思ったら我慢しないでまず、かかりつけの先生か泌尿器科医に相談することです。まず、その頻尿が異常なのか異常でないのか、異常なら治療が必要なのか必要ないのか、治療が必要ならどのような治療が良いのか、答えは必ず見つかると思います。