第47回 尿路結石

気が付くと年が明け、桜の花も散り、暖かい日々が続くようになってきました。これで47回目のコラムなのですが、泌尿器科で最も痛い病気、尿路結石症を一度もしっかりと取り上げていないことに気が付きました。今回は、この尿路結石症について書いていきたいと思います。
結石と言っても体にできる石には色々なものがあり、原因も異なります。よく混同される胆石は、胆のうという臓器にできる石で尿路にできる石とは、原因も組成も全く異なります。胆石を持つ人が、尿路結石に罹り、“私は良く石ができるので......。”と言われるのは、冗談としては良くできていますが医学的には正しくありません。 尿路結石は、その石が存在する場所によって病名が違ってきます。腎臓に石があれば腎結石、尿管にあれば(これが一番痛む場所です。) 尿管結石、膀胱にあれば膀胱結石、滅多にありませんが尿道にあれば尿道結石という名前になります。一番多いパターンは腎臓で石ができ、尿管に落ちてくるという場合です。5mm前後の結石が尿管に動いて落ちてくるとこの世のものとは思えない痛みが襲ってきます。(と、多くの患者さんは言われます。) 吐き気を伴う腰背部痛、血尿が特徴的な症状で、超音波検査で腎臓が腫れているのを確認できれば診断は比較的容易です。腎臓が腫れるというのは、尿管というパイプに石が詰まると腎臓で作られる尿が石の場所でせき止められて腎臓で尿が溜まり、腎臓がカーンと張って痛みとなるのです。 結石ができる原因は、尿が濃くなると尿中のカルシウムとシュウ酸、リン酸が結合して結晶になったり、あるいは尿酸が多量に出てくると尿酸の結晶が析出することです。また、遺伝的な病気でシスチンという物質が尿中にたくさん出てきて結石になるというものもあります。
一般的に、7mm以下の結石は自然に出てくることが多いですが、8mm以上の結石は出てくるまでに時間がかかったり、出てこなかったりするので外科的に治療することが必要になってきます。検査で、7mm以下の石であることがわかると、痛いときには痛み止めを使いながら排石促進剤で結石が出てくるのを待ちます。カルシウムを含む結石は溶けませんが尿酸を含む結石は溶けるので尿をアルカリにする薬を飲んで溶解を促すこともあります。8mm以上の結石は皆さんが良く爆破という言葉で表現されますが、ショックウェーブという機械で体の外から衝撃波を当て結石を破砕して出易くしたり、尿管の中に細い鏡(尿管鏡) とともに石を破砕する機械を入れて石を砕いたりします。私が研修医のころは、泌尿器科で多い手術の一つが結石を取り出す開腹手術でしたが、今ではすっかり行われなくなりました。
尿路結石の予防としては、生活習慣の改善、食事療法が大事で夜遅くに帰ってきてお腹いっぱい食事をし、すぐ寝てしまうという生活をしている方、水分摂取が少なく濃いおしっこを常時している方、シュウ酸を多く含まれる食事を好んでする方、お酒、特に醸造酒(ワイン、ビール、日本酒など)を好んで飲まれる方は注意が必要です。一昔は、結石の原因の一つはカルシウムだ、結石を再発する人はカルシウムを制限しなくてはならないと言って牛乳を飲まないでくださいなんて指導していたこともありましたが、今は逆でシュウ酸が結石の悪役でこれを尿中に出さないようにするには腸管におけるシュウ酸の吸収を少なくする必要があり、そのためには牛乳などのカルシウムをたくさん取ることによって腸管内でシュウ酸カルシウムの結晶を作らせて吸収できないようにしてしまおうとしています。つまりカルシウムをしっかり取りましょうと指導しているわけです。また、尿酸も尿酸結石の原因だけでなく、すべての結石を形成する因子となります。尿酸値が高い方は注意しましょう。 これから暑くなりまた結石ができやすいシーズンとなります。普段から水分をしっかり取って尿を濃縮させないように気を付けてください。