第52回 男性の尿失禁
男性の尿失禁には、1.切迫性尿失禁、2.腹圧性尿失禁、3.排尿後滴下の3つがあります。
1. 切迫性尿失禁とは急におしっこがしたくなって、我慢が出来ず漏れてしまうような失禁です。これは、前立腺肥大症や過活動膀胱が原因となり起こることが多いです。膀胱の直下に位置する前立腺が大きくなる(前立腺肥大)と様々な理由から膀胱のおしっこを感じるセンサー(知覚神経)が敏感になり、通常は脳からの指令でコントロールされている膀胱が自分勝手に収縮してしまうのが原因です。前立腺肥大の方の約半分にこの症状がみられ、この場合前立腺に対するお薬を内服することで症状は改善します。また、半分の方は前立腺のお薬を内服してもこの切迫性尿失禁は良くなりません。この場合は、並存する過活動膀胱が症状の原因と考えられ、膀胱の収縮を抑えてあげる薬を内服することで良くなります。昔は、口渇や便秘などの副作用を伴うお薬が主流でしたが、現在ではこれらの副作用をなくしたお薬がまず使われるようになり、安全に副作用を感じることなく治療できるようになりました。
2. 腹圧性尿失禁は、通常女性に多い病気ですが、前立腺癌の手術を受けた方、高齢になり括約筋の機能が落ちた方、肥満の方、脊髄の病気を持っておられる男性の方にも起こることがあります。おなかに力が入った時に尿が漏れる症状で、重いものを持ち上げたり、体をひねったり、走ったりすると漏れるとよく患者さんは訴えられます。治療は、まず骨盤体操という括約筋のトレーニングをすることが勧められます。肛門を閉めたり緩めたりする運動をしっかりと行うことで括約筋の機能が戻ってきます。肥満のある方はまず体重を落としてください。それでも効果が出ない場合、お薬を併用することがあります。お薬を使う場合も骨盤体操を欠かさないようにするのが症状の改善の近道です。前立腺癌の手術後の重症の括約筋の障害の場合人工括約筋を装着する方法もあります。
3. 排尿後滴下はおしっこが終わったと思い陰茎を下着に仕舞った途端、じわーっと漏れる失禁で、別名”追っかけ漏れ”とも呼ばれているそうです。前立腺肥大に伴うことが多く、尿が尿道に残っていることが原因だと考えられています。ズボンがぬれたり、気持ち悪かったり、本当に困った症状ですが前立腺肥大に対する治療が奏功することが多いです。
前立腺肥大や過活動膀胱の薬も最近は様々なものが登場し、色々な組み合わせで今まで改善できなかった症状を良くすることができるようになりました。年のせいだからとあきらめていた症状も良くすることができます。また、膀胱癌や前立腺癌などの悪性疾患が隠れている場合もありますので、おひとりで悩まず、かかりつけ医、泌尿器科専門医にご相談ください。